2026/01/16 twst レオカリ / 神様パロの続編 / 水神と生活続きを読む レオナは激怒した。かの天真爛漫で天衣無縫の神に言い聞かせてやらねばと決意した。 レオナが生贄に捧げられて三日、神ことカリムに生贄ではなく家族として迎えられてから早一週間。レオナは肉を食べていなかった。 なんでもレオナが食べられるのはカリムを信仰している民たちの捧げ物だけらしく、そして食べ物の捧げ物の多くは果実だった。最初のうちは腹が満たせればそれで良いと思っていたが、人種たるもの欲求が満たされればさらなる欲求が生まれるのが世の常である。 ましてや育ち盛りの肉食獣を祖とするライオンの獣人であるレオナだ。肉が食べたくて仕方がなくなっていた。 神という上位存在に養われている身でありながら図々しいかもしれないが、本能が叫ぶのだ。果実なんて草食動物の食べるものであると。 白亜の宮殿には人の気配がないのに常に清潔に保たれている。欲しいと思ったものは宮殿にあればいつの間にか現れる。しかしカリム以外に誰もいない。ここに来て一番に聞いてみたが、どうやら精霊や妖精が勝手に行なってくれているらしい。 あの明るい男が一人きりでこんなだだっ広い宮殿に住んでいて寂しくなかったのかと思ったが、どうやら宮殿にはあまりいなかったそうだ。普段はどこかをほっつき歩いて、たまに宮殿に戻って捧げ物を確認する。 そうやって過ごしてきたからレオナが来てくれて嬉しいと言っていた。レオナにとって照れくさいことを恥ずかしげもなく言うカリムとの生活に慣れるのはいつになるだろうか。 カリムの領域である熱砂の国は砂漠のど真ん中という場所にあるのに水が豊富で、植物も多い。 太陽みたいな笑顔を振りまいているくせにカリムはどうやら水を司る神らしい。カリムの出す水に慣れてしまえば、他所での水なんて飲めたものではないと思うくらいには味が良い。初めて水を飲んだ時に美味いと思ったのは当然のことだった。 熱砂の国の民はカリムを崇め、感謝を忘れず捧げ物も多い。レオナが着ている服も、カリムに捧げられた反物を妖精たちが仕立てたものだ。つるつるとして肌触りがよく、一目で高級なものだと分かる。夕焼けの草原でも見たことがない。 装飾の類も多く、純金でできたアクセサリや最高級の宝石なんかもあった。カリムはそんなアクセサリを身につけているが、レオナはそんな重苦しいものをつける気がせず断っていた。 ――そんなことはどうでも良い。肉だ、今すぐ肉を食べたい。 ここに来てから一口も食べていない。動物性たんぱく質を取っていないのは健康に悪いと思わないのか。思わないのだろう。なんと言ってもカリムは神だから。人の食すものには滅多に口をつけない。 代りに、たまに何かを食べているところを見るが、それが何なのかは分からない。けれど、決してレオナが食べては駄目だと言い聞かせられている。美味いのかと聞けば分からないと答えられた。 まぁ、肉でないなら興味はない。とにかく肉だ。レオナはカリムを探してサンルームへとやってきた。 レオナに構いたがるカリムを鬱陶しいと突き放した結果、カリムはよくそこにいるようになったので、今日もいるだろうとやって来てみれば予想通り。捧げ物にあったココナッツに穴を空けてストローを差し、ココナッツジュースを美味しそうに飲んでいる。「おい、カリム」 声をかけると、カリムはすぐさま嬉しそうに振り向いた。「レオナ! 今日は機嫌悪くないのか?」「生憎だが最悪だ」「ん? なら何で来たんだ?」 寂しがりの構いたがりの自分のもとに来るなんて珍しい、とカリムが不思議そうに思っているのがよく分かる。神のくせして考えることが表情に出過ぎだ。「肉が食いたい」 レオナはここに来てから常々考えていたことを正直に話す。何も果実が不味いわけではない。しかしレオナは肉食動物であるということをこんこんと語る。肉を食べないままでいたら成長にも影響が出るかもしれない。 そう伝えるとカリムは顔を青くして、持っていたココナッツを放り投げてレオナに近づく。ぺたぺたと頬を触ったり、頭を撫でたりしながら心配そうに「大丈夫か?」「人種が肉を食べないといけないなんて知らなかった」などなど。 正直、肉を食べない人間もいるだろう。ただレオナが野菜を毛嫌いしているだけと言うのは伏せておくことにした。あまりに心配そうにするカリムに気を遣ったわけではない、決して。「じゃあ、肉を捧げるようにお告げを下そう」 お告げ、と聞いてレオナはぱちりと目を瞬いた。そんなことができるのかと。「オレが人々と交流を持つために、適当に素質がありそうな奴を預言者に選ぶんだ。預言者は神の声を聞き、人々に伝える役割がある。オレは滅多にお告げを下したりしないけど、頻繁にやる神もいるらしい」 人々を導くのが神の仕事だからなぁとカリムは腕を組む。そんなシステムがあるなんてレオナは知らなかった。まぁ、レオナのいた国では神が数十年単位で不在にしていたのだから仕方がないことなのかもしれない。「お前もうちの国の神も、随分と放任主義のようだな」 人々を導くのが仕事と言いつつ、カリムが何かしていたところは見たことがない。レオナの言いように、カリムは口を大きく開けて笑った。「あっはっはっは! それもそうだな! でも、熱砂の国の人々は優秀だからオレが導く必要もないんだよ。そういえば最初に水の加護を与えてからこれと言って何かしたことはないな〜」 簡単に明るく言うカリムだが、乾いた砂しかない土地に水を与え、たくさんの人が住める土地にしたといえば十分導いていると言ってもいいのかもしれない。砂漠に水の神がいるだなんて奇跡としか言いようがないか。 それに、ちゃんと様子を見に戻っているのだからレオナの国の神よりも断然良い。軽くでも褒めるとカリムが調子に乗るため口にはしないが。「それじゃあ早速お告げを下すぜ!」 言うが早いか、カリムはサンルームを飛び出して行ってしまった。専用の部屋でもあるのかもしれない。この広い宮殿を、レオナは未だ把握しきれていない。神事に関わる部屋などは結界が張られているからレオナは入れないとも言われていた。 とにかく肉に関する飢えは解消されるだろう。最後に果実を食べ納めでもしておこうかとレオナもサンルームを後にした。 レオナが自身に与えられた部屋で、いつの間にか用意されていた葡萄をベッドに横になりながら一粒一粒食べているとカリムがやって来た。突然扉を開けられて思わず驚いたのは秘密だ。「肉料理を捧げ物に加えるように言っておいたぜ!」「それは……ありがたいな。それよりもカリム、部屋に入る前にはノックをして俺の返事を待て」 早速お告げを下して来たのだろう。そのことを報告するためにやって来たカリムがレオナを抱きしめようと近づいてくるのを阻止しながら注意する。 するとカリムは何を言われたのか分からないとばかりに首を傾ぐ。「のっく? なんだ? それ」「お前……神のくせにノックも知らねぇのかよ……」 レオナはベッドから降りて扉に近づき、こんこんと扉を叩いた。「こうやって中にいる人間に入っていいか確認するんだ。中に誰もいないかもしれないし、いたらいたでまだ入らないで欲しいタイミングってのがある。ちゃんと入室の許可を貰ってから入れ。それぐらい常識だろうが、神サマよ」「へぇ、人の間にはそんな習慣があるんだなぁ。他の神に会いに行く時は気配で分かるし、この宮殿にはオレ以外いなかったから知らなかったぜ。教えてくれてありがとな、レオナ!」 人のことが知れて嬉しいと微笑むカリムに、レオナは少し固まってしまった。そうか、この宮殿にはカリムしかいないから知らなくて当然だったのか。 レオナでさえ一週間経っても全貌を把握しきれない白亜の宮殿。神としてここにずっといるのは寂しいからカリムは常にどこかへと行っていたのかとやっと心から理解した。 死にかけの子供を軽率に助けてしまう神だ。自分以外に誰もいない宮殿に一人なんて、たとえどれだけ捧げ物をされていたとしても耐えられなかったのだろう。土地に加護を与えて、何もしなくとも栄えていく様を見ているだけなのは辛かったのかも知れない。「次はしっかりノックしてから入るぜ!」「……ちゃんと返事を待ってからにしろよ」「おう!」 返事は一人前だが、これはまたノックなんて忘れて扉を開けてくることがありそうだ。いきなり入られて困ることなんて、寝てる時くらいしかないからいいかと考え直した。これから長い人生をこの神と送るのだから、それくらい心に余裕を持たなければいけないのだろう。 翌日、念願の肉料理が呈された。野菜が添えられていたがそれを無視して食べたところ、カリムに「成長するにはそれも食べなきゃダメなんじゃないか?」と問われたが、レオナは耳を伏せて聞こえないふりをするのだった。畳む
レオナは激怒した。かの天真爛漫で天衣無縫の神に言い聞かせてやらねばと決意した。
レオナが生贄に捧げられて三日、神ことカリムに生贄ではなく家族として迎えられてから早一週間。レオナは肉を食べていなかった。
なんでもレオナが食べられるのはカリムを信仰している民たちの捧げ物だけらしく、そして食べ物の捧げ物の多くは果実だった。最初のうちは腹が満たせればそれで良いと思っていたが、人種たるもの欲求が満たされればさらなる欲求が生まれるのが世の常である。
ましてや育ち盛りの肉食獣を祖とするライオンの獣人であるレオナだ。肉が食べたくて仕方がなくなっていた。
神という上位存在に養われている身でありながら図々しいかもしれないが、本能が叫ぶのだ。果実なんて草食動物の食べるものであると。
白亜の宮殿には人の気配がないのに常に清潔に保たれている。欲しいと思ったものは宮殿にあればいつの間にか現れる。しかしカリム以外に誰もいない。ここに来て一番に聞いてみたが、どうやら精霊や妖精が勝手に行なってくれているらしい。
あの明るい男が一人きりでこんなだだっ広い宮殿に住んでいて寂しくなかったのかと思ったが、どうやら宮殿にはあまりいなかったそうだ。普段はどこかをほっつき歩いて、たまに宮殿に戻って捧げ物を確認する。
そうやって過ごしてきたからレオナが来てくれて嬉しいと言っていた。レオナにとって照れくさいことを恥ずかしげもなく言うカリムとの生活に慣れるのはいつになるだろうか。
カリムの領域である熱砂の国は砂漠のど真ん中という場所にあるのに水が豊富で、植物も多い。
太陽みたいな笑顔を振りまいているくせにカリムはどうやら水を司る神らしい。カリムの出す水に慣れてしまえば、他所での水なんて飲めたものではないと思うくらいには味が良い。初めて水を飲んだ時に美味いと思ったのは当然のことだった。
熱砂の国の民はカリムを崇め、感謝を忘れず捧げ物も多い。レオナが着ている服も、カリムに捧げられた反物を妖精たちが仕立てたものだ。つるつるとして肌触りがよく、一目で高級なものだと分かる。夕焼けの草原でも見たことがない。
装飾の類も多く、純金でできたアクセサリや最高級の宝石なんかもあった。カリムはそんなアクセサリを身につけているが、レオナはそんな重苦しいものをつける気がせず断っていた。
――そんなことはどうでも良い。肉だ、今すぐ肉を食べたい。
ここに来てから一口も食べていない。動物性たんぱく質を取っていないのは健康に悪いと思わないのか。思わないのだろう。なんと言ってもカリムは神だから。人の食すものには滅多に口をつけない。
代りに、たまに何かを食べているところを見るが、それが何なのかは分からない。けれど、決してレオナが食べては駄目だと言い聞かせられている。美味いのかと聞けば分からないと答えられた。
まぁ、肉でないなら興味はない。とにかく肉だ。レオナはカリムを探してサンルームへとやってきた。
レオナに構いたがるカリムを鬱陶しいと突き放した結果、カリムはよくそこにいるようになったので、今日もいるだろうとやって来てみれば予想通り。捧げ物にあったココナッツに穴を空けてストローを差し、ココナッツジュースを美味しそうに飲んでいる。
「おい、カリム」
声をかけると、カリムはすぐさま嬉しそうに振り向いた。
「レオナ! 今日は機嫌悪くないのか?」
「生憎だが最悪だ」
「ん? なら何で来たんだ?」
寂しがりの構いたがりの自分のもとに来るなんて珍しい、とカリムが不思議そうに思っているのがよく分かる。神のくせして考えることが表情に出過ぎだ。
「肉が食いたい」
レオナはここに来てから常々考えていたことを正直に話す。何も果実が不味いわけではない。しかしレオナは肉食動物であるということをこんこんと語る。肉を食べないままでいたら成長にも影響が出るかもしれない。
そう伝えるとカリムは顔を青くして、持っていたココナッツを放り投げてレオナに近づく。ぺたぺたと頬を触ったり、頭を撫でたりしながら心配そうに「大丈夫か?」「人種が肉を食べないといけないなんて知らなかった」などなど。
正直、肉を食べない人間もいるだろう。ただレオナが野菜を毛嫌いしているだけと言うのは伏せておくことにした。あまりに心配そうにするカリムに気を遣ったわけではない、決して。
「じゃあ、肉を捧げるようにお告げを下そう」
お告げ、と聞いてレオナはぱちりと目を瞬いた。そんなことができるのかと。
「オレが人々と交流を持つために、適当に素質がありそうな奴を預言者に選ぶんだ。預言者は神の声を聞き、人々に伝える役割がある。オレは滅多にお告げを下したりしないけど、頻繁にやる神もいるらしい」
人々を導くのが神の仕事だからなぁとカリムは腕を組む。そんなシステムがあるなんてレオナは知らなかった。まぁ、レオナのいた国では神が数十年単位で不在にしていたのだから仕方がないことなのかもしれない。
「お前もうちの国の神も、随分と放任主義のようだな」
人々を導くのが仕事と言いつつ、カリムが何かしていたところは見たことがない。レオナの言いように、カリムは口を大きく開けて笑った。
「あっはっはっは! それもそうだな! でも、熱砂の国の人々は優秀だからオレが導く必要もないんだよ。そういえば最初に水の加護を与えてからこれと言って何かしたことはないな〜」
簡単に明るく言うカリムだが、乾いた砂しかない土地に水を与え、たくさんの人が住める土地にしたといえば十分導いていると言ってもいいのかもしれない。砂漠に水の神がいるだなんて奇跡としか言いようがないか。
それに、ちゃんと様子を見に戻っているのだからレオナの国の神よりも断然良い。軽くでも褒めるとカリムが調子に乗るため口にはしないが。
「それじゃあ早速お告げを下すぜ!」
言うが早いか、カリムはサンルームを飛び出して行ってしまった。専用の部屋でもあるのかもしれない。この広い宮殿を、レオナは未だ把握しきれていない。神事に関わる部屋などは結界が張られているからレオナは入れないとも言われていた。
とにかく肉に関する飢えは解消されるだろう。最後に果実を食べ納めでもしておこうかとレオナもサンルームを後にした。
レオナが自身に与えられた部屋で、いつの間にか用意されていた葡萄をベッドに横になりながら一粒一粒食べているとカリムがやって来た。突然扉を開けられて思わず驚いたのは秘密だ。
「肉料理を捧げ物に加えるように言っておいたぜ!」
「それは……ありがたいな。それよりもカリム、部屋に入る前にはノックをして俺の返事を待て」
早速お告げを下して来たのだろう。そのことを報告するためにやって来たカリムがレオナを抱きしめようと近づいてくるのを阻止しながら注意する。
するとカリムは何を言われたのか分からないとばかりに首を傾ぐ。
「のっく? なんだ? それ」
「お前……神のくせにノックも知らねぇのかよ……」
レオナはベッドから降りて扉に近づき、こんこんと扉を叩いた。
「こうやって中にいる人間に入っていいか確認するんだ。中に誰もいないかもしれないし、いたらいたでまだ入らないで欲しいタイミングってのがある。ちゃんと入室の許可を貰ってから入れ。それぐらい常識だろうが、神サマよ」
「へぇ、人の間にはそんな習慣があるんだなぁ。他の神に会いに行く時は気配で分かるし、この宮殿にはオレ以外いなかったから知らなかったぜ。教えてくれてありがとな、レオナ!」
人のことが知れて嬉しいと微笑むカリムに、レオナは少し固まってしまった。そうか、この宮殿にはカリムしかいないから知らなくて当然だったのか。
レオナでさえ一週間経っても全貌を把握しきれない白亜の宮殿。神としてここにずっといるのは寂しいからカリムは常にどこかへと行っていたのかとやっと心から理解した。
死にかけの子供を軽率に助けてしまう神だ。自分以外に誰もいない宮殿に一人なんて、たとえどれだけ捧げ物をされていたとしても耐えられなかったのだろう。土地に加護を与えて、何もしなくとも栄えていく様を見ているだけなのは辛かったのかも知れない。
「次はしっかりノックしてから入るぜ!」
「……ちゃんと返事を待ってからにしろよ」
「おう!」
返事は一人前だが、これはまたノックなんて忘れて扉を開けてくることがありそうだ。いきなり入られて困ることなんて、寝てる時くらいしかないからいいかと考え直した。これから長い人生をこの神と送るのだから、それくらい心に余裕を持たなければいけないのだろう。
翌日、念願の肉料理が呈された。野菜が添えられていたがそれを無視して食べたところ、カリムに「成長するにはそれも食べなきゃダメなんじゃないか?」と問われたが、レオナは耳を伏せて聞こえないふりをするのだった。畳む