2024/11/24 twst フロカリ / 怖くなんてないさ続きを読むゴーストや妖精、獣人や人魚。様々な生き物があたりまえにいる世界で、たかが魔法の使えない人間が作った映画ごときに誰が怯えるか、と言ったのは、数刻前のフロイドである。だがしかし、現実はどうであろうか。ガタガタと震えながらカリムにしがみつく男は、先程から画面上で何か起こるたびに悲鳴を上げ、カリムの臓腑を圧迫している。「ふむ、意外じゃのう」「リリアちゃん、そんなこと言ってないでカリムくんのこと助けないと」意外そうにカリムに抱きつくフロイドを見つめつつ呟くリリアに、ケイトは冷静にツッコミをいれる。どうしてこのような状況になっているかというと、いつものようにリリアたち軽音部のメンバーが部活動に勤しもうとお菓子を広げたところで、ケイトが映画を見ないかと提案してきたところから始まる。魔法を使えない人間たちが作ったのにとてもリアルで、怖すぎて泣き出す人もいたという有名なホラー映画。それを三人で鑑賞しようという話になったのだ。いざ映画を見ようとしたタイミングで、部活を抜け出してきたらしいフロイドがやってきた。部室の扉を開けて第一声が「ラッコちゃん遊ぼ〜」だったのは言うまでもない。そこで、カリムがこれから映画を見るところだと告げるとフロイドはすぐさまじゃあオレも、となったのだが、前述の通り魔法が使えない人間が作った至高のホラー映画であると言ったところ、フロイドの表情が一瞬固まった。おや? とリリアとケイトは疑問を抱いた直後、フロイドは「魔法の使えない人間が作った映画なんてたかが知れてんじゃん」と言い出した。遠回しにそんなもの見たくはない、とでも言ってるようなモノである。「もしやおぬし、映画が怖いのか? 海のギャングとも言われておるウツボの人魚が?」「は? 何言ってんのメンダコちゃん。たかが人間が作った映画なんかで誰が怖がるかよ」「あのー、無理は良くないと思うよ? フロイドくん」「無理なんてしてねーし、ハナダイくんも何言ってんの」「フロイド、もしかして映画が怖いのか?」「怖くなんてねーし!」そう喚くフロイドはとっとと映画を見ようと自ら促し始めた。自らリモコンを奪い取り、再生ボタンを押したのである。そしていそいそとカリムの背後に回り込むと、そこに座ってカリムを抱え込んだ。そこからカリムの受難の時間が始まったのだ。冒頭は特に問題なく見ていたが、意味深ではあるが特になんでもないシーンでさえ悲鳴を上げ、中盤以降はただひたすらカリムの臓腑を締め上げるbotになってしまった。カリムはカリムで映画どころではない。いつフロイドに胴を締め上げられるか不安で仕方ないようだ。こんな可哀想な映画鑑賞会があってたまるか。面白そうに見守るリリアからリモコンを取り上げたケイトは映画を停止した。映画は途中までだが話題の通り本当に魔法を使っていないのかと疑いたくなるほどリアリティがあり、話が進むにつれどんどん恐怖を煽る内容だったが、フロイドの悲鳴とそれに付随するカリムの苦しそうな声のせいで内容が頭に入ってこない。「フロイドくん! ホラー映画が苦手なら苦手って言いなよ!」「……苦手じゃねーし……」「今更そんなこと言ってもだいぶ遅いのぅ」「ははは……フロイドでも苦手なことってあるんだなぁ」苦笑しながら腕に回ったままのフロイドの腕をポンポンと宥めるように叩いてやるカリムは聖人か何かか? とケイトは思う。「怖いものが苦手なのは別に悪いことではないじゃろう。何も恥じることはない」「そうだよ。確かにフロイドくんが怖いものが苦手って意外だけど、別に良いんじゃない? ほら、ギャップ萌えってのもあるし」落ち込んだようにカリムの肩に顔を埋めるフロイドを慰めるリリアとケイト。カリムは腕を上げて今度はフロイドの頭を優しく撫でている。「ギャップモエとかいらねーし……あー、ラッコちゃんにカッコ悪いとこ見せたくなかったのに……」ならば最初から映画鑑賞に参加しなければ良かったのでは、と言う言葉をケイトは口にはしなかった。空気を読むことにはこの場では一番長けているケイトだからこそできたことだ。「ならば最初から映画なぞ見なければ良かったじゃろ?」しかし空気を読むことを知らない、いや読んだ上で敢えて言うのがリリアである。フロイドはカリムの肩から顔を上げ、リリアをギッと睨む。睨まれたリリアはどこ吹く風とばかりに余裕の表情だ。もしも睨まれたのが普通の生徒だったら失神していたであろう鋭い目つきだ。「あそこまで言われたら見ないわけにいかねーじゃん……!」そこまで言った記憶はない、と訴えたかったがそこはきっと聞いてもらえないだろう。「なんでフロイドは怖いものが苦手なんだ? ゴーストなんかこの学園にいるだろ?」そしてフロイドの怖がりを深掘りしようとするカリム。これはカリムではなかったら確実に半殺しにされていたであろう質問だ。ケイトはカリムのその疑問に思ったことをすぐに口に出せるところを凄いと思った。同時に見習いたくはないとも。「……ラッコちゃんは海のゴーストを見たことないから言えるんだよ」「海のゴースト?」ゴーストといえばNRCでは当たり前に存在するが、それはNRCが常に魔力に満ち溢れている場所だからであり、その他の場所ではゴーストとはまだまだ珍しい存在である。ハロウィーンの時期やある条件を満たした場合のみ、NRCのような魔力が溢れいている場以外でもゴーストが現れるときがある、程度だ。NRCや RSAに通っていて、かつ魔法士であるという適性がなければ、運が良ければ出会える存在。それがゴーストである。フロイドはどうやら元々適性があるとはいえ、海の底では珍しいゴーストと出会ったことがあるらしい。「海のゴーストってどんな感じなんだ?」「……思い出すのもスッゲー嫌なんだけど……」「あ、フロイドが嫌なんら別に話さなくても良いんだぞ!」嫌そうな顔をするフロイドに、カリムはすぐに話さなくても構わないと言ったが、フロイドは少し考えた後、「別にいいよ」と語り出した。「稚魚の時にさぁ、なんとなく夜中に目が覚めて……って言っても海の底の夜中なんて昼間と大して差がないんだけどさ。なんとなく家から出て泳いでたわけ。そしたら変な影が見えて……こんな時間に他の人魚がいんのかと思って近づいてみたら……」そこでフロイドは顔色を悪くする。当時のことを思い出したらしい。カリムは再び無理するな、とフロイドに言ったが、フロイドはここまで来たら最後まで聞いてほしいらしく言葉を続けた。「ブクブクに太ってて目が濁った頭蓋骨剥き出しのゴーストがケタケタ笑いながらオレのこと追いかけて来たんだよね」多分、近くの沈没船に乗ってた船員のゴーストだったんだろうけど、とフロイドは言う。その話を聞いたケイトとカリムは顔を青くする。幼いうちにそんな経験をしていたら怖いものが苦手になっても仕方がない。「なるほど、魂の形ではなく、水死体の姿で現れたんじゃな。趣味の悪いゴーストがいたものじゃ」対してリリアは特に驚きもせずに頷いている。ケイトは時折思うのだが、リリアは本当に同級生なのだろうか? 見た目は恐ろしく若く可愛らしいが、喋り方なども含めて若々しさを感じられない時がある。「あー‼︎ 思い出したらまた気持ち悪くなってきた! ラッコちゃん責任とって今日は一緒にオレと寝ること!」「えっ?! オレのせいなのか? でも無理矢理聞き出しちまったのはオレだし……スカラビアに来てくれるんだったらいいぜ!」結構勝手なことを言われているのにカリムは快くフロイドの言うことを了承した。カリムは話すことを止めていたのに勝手に語ったのはフロイドの方だと言うのに、カリムの心の広さは無限大なのだろうか。常々ケイトは感心するしかない。じゃあラッコちゃんの部屋行こ! とフロイドはカリムを横抱きに抱え上げ、立ち上がると軽音部の部室をカリムと共に後にした。残されたリリアとケイトはその二人をただ見送るしかない。「いやぁ、意外なことが知れたのぅ」「カリムくん、あれで良いのかな……?」広げられたお菓子は全然減っておらず、カリムの持ってきたジャミル特性のお菓子なんかも残したまま。こうなったら映画鑑賞のやり直しをしようとリリアとケイトは決め、映画を最初から見ることにしたのだった。畳む
ゴーストや妖精、獣人や人魚。様々な生き物があたりまえにいる世界で、たかが魔法の使えない人間が作った映画ごときに誰が怯えるか、と言ったのは、数刻前のフロイドである。
だがしかし、現実はどうであろうか。ガタガタと震えながらカリムにしがみつく男は、先程から画面上で何か起こるたびに悲鳴を上げ、カリムの臓腑を圧迫している。
「ふむ、意外じゃのう」
「リリアちゃん、そんなこと言ってないでカリムくんのこと助けないと」
意外そうにカリムに抱きつくフロイドを見つめつつ呟くリリアに、ケイトは冷静にツッコミをいれる。
どうしてこのような状況になっているかというと、いつものようにリリアたち軽音部のメンバーが部活動に勤しもうとお菓子を広げたところで、ケイトが映画を見ないかと提案してきたところから始まる。
魔法を使えない人間たちが作ったのにとてもリアルで、怖すぎて泣き出す人もいたという有名なホラー映画。それを三人で鑑賞しようという話になったのだ。
いざ映画を見ようとしたタイミングで、部活を抜け出してきたらしいフロイドがやってきた。部室の扉を開けて第一声が「ラッコちゃん遊ぼ〜」だったのは言うまでもない。
そこで、カリムがこれから映画を見るところだと告げるとフロイドはすぐさまじゃあオレも、となったのだが、前述の通り魔法が使えない人間が作った至高のホラー映画であると言ったところ、フロイドの表情が一瞬固まった。
おや? とリリアとケイトは疑問を抱いた直後、フロイドは「魔法の使えない人間が作った映画なんてたかが知れてんじゃん」と言い出した。遠回しにそんなもの見たくはない、とでも言ってるようなモノである。
「もしやおぬし、映画が怖いのか? 海のギャングとも言われておるウツボの人魚が?」
「は? 何言ってんのメンダコちゃん。たかが人間が作った映画なんかで誰が怖がるかよ」
「あのー、無理は良くないと思うよ? フロイドくん」
「無理なんてしてねーし、ハナダイくんも何言ってんの」
「フロイド、もしかして映画が怖いのか?」
「怖くなんてねーし!」
そう喚くフロイドはとっとと映画を見ようと自ら促し始めた。自らリモコンを奪い取り、再生ボタンを押したのである。
そしていそいそとカリムの背後に回り込むと、そこに座ってカリムを抱え込んだ。そこからカリムの受難の時間が始まったのだ。
冒頭は特に問題なく見ていたが、意味深ではあるが特になんでもないシーンでさえ悲鳴を上げ、中盤以降はただひたすらカリムの臓腑を締め上げるbotになってしまった。
カリムはカリムで映画どころではない。いつフロイドに胴を締め上げられるか不安で仕方ないようだ。こんな可哀想な映画鑑賞会があってたまるか。面白そうに見守るリリアからリモコンを取り上げたケイトは映画を停止した。
映画は途中までだが話題の通り本当に魔法を使っていないのかと疑いたくなるほどリアリティがあり、話が進むにつれどんどん恐怖を煽る内容だったが、フロイドの悲鳴とそれに付随するカリムの苦しそうな声のせいで内容が頭に入ってこない。
「フロイドくん! ホラー映画が苦手なら苦手って言いなよ!」
「……苦手じゃねーし……」
「今更そんなこと言ってもだいぶ遅いのぅ」
「ははは……フロイドでも苦手なことってあるんだなぁ」
苦笑しながら腕に回ったままのフロイドの腕をポンポンと宥めるように叩いてやるカリムは聖人か何かか? とケイトは思う。
「怖いものが苦手なのは別に悪いことではないじゃろう。何も恥じることはない」
「そうだよ。確かにフロイドくんが怖いものが苦手って意外だけど、別に良いんじゃない? ほら、ギャップ萌えってのもあるし」
落ち込んだようにカリムの肩に顔を埋めるフロイドを慰めるリリアとケイト。カリムは腕を上げて今度はフロイドの頭を優しく撫でている。
「ギャップモエとかいらねーし……あー、ラッコちゃんにカッコ悪いとこ見せたくなかったのに……」
ならば最初から映画鑑賞に参加しなければ良かったのでは、と言う言葉をケイトは口にはしなかった。空気を読むことにはこの場では一番長けているケイトだからこそできたことだ。
「ならば最初から映画なぞ見なければ良かったじゃろ?」
しかし空気を読むことを知らない、いや読んだ上で敢えて言うのがリリアである。フロイドはカリムの肩から顔を上げ、リリアをギッと睨む。睨まれたリリアはどこ吹く風とばかりに余裕の表情だ。もしも睨まれたのが普通の生徒だったら失神していたであろう鋭い目つきだ。
「あそこまで言われたら見ないわけにいかねーじゃん……!」
そこまで言った記憶はない、と訴えたかったがそこはきっと聞いてもらえないだろう。
「なんでフロイドは怖いものが苦手なんだ? ゴーストなんかこの学園にいるだろ?」
そしてフロイドの怖がりを深掘りしようとするカリム。これはカリムではなかったら確実に半殺しにされていたであろう質問だ。ケイトはカリムのその疑問に思ったことをすぐに口に出せるところを凄いと思った。同時に見習いたくはないとも。
「……ラッコちゃんは海のゴーストを見たことないから言えるんだよ」
「海のゴースト?」
ゴーストといえばNRCでは当たり前に存在するが、それはNRCが常に魔力に満ち溢れている場所だからであり、その他の場所ではゴーストとはまだまだ珍しい存在である。ハロウィーンの時期やある条件を満たした場合のみ、NRCのような魔力が溢れいている場以外でもゴーストが現れるときがある、程度だ。
NRCや RSAに通っていて、かつ魔法士であるという適性がなければ、運が良ければ出会える存在。それがゴーストである。
フロイドはどうやら元々適性があるとはいえ、海の底では珍しいゴーストと出会ったことがあるらしい。
「海のゴーストってどんな感じなんだ?」
「……思い出すのもスッゲー嫌なんだけど……」
「あ、フロイドが嫌なんら別に話さなくても良いんだぞ!」
嫌そうな顔をするフロイドに、カリムはすぐに話さなくても構わないと言ったが、フロイドは少し考えた後、「別にいいよ」と語り出した。
「稚魚の時にさぁ、なんとなく夜中に目が覚めて……って言っても海の底の夜中なんて昼間と大して差がないんだけどさ。なんとなく家から出て泳いでたわけ。そしたら変な影が見えて……こんな時間に他の人魚がいんのかと思って近づいてみたら……」
そこでフロイドは顔色を悪くする。当時のことを思い出したらしい。カリムは再び無理するな、とフロイドに言ったが、フロイドはここまで来たら最後まで聞いてほしいらしく言葉を続けた。
「ブクブクに太ってて目が濁った頭蓋骨剥き出しのゴーストがケタケタ笑いながらオレのこと追いかけて来たんだよね」
多分、近くの沈没船に乗ってた船員のゴーストだったんだろうけど、とフロイドは言う。
その話を聞いたケイトとカリムは顔を青くする。幼いうちにそんな経験をしていたら怖いものが苦手になっても仕方がない。
「なるほど、魂の形ではなく、水死体の姿で現れたんじゃな。趣味の悪いゴーストがいたものじゃ」
対してリリアは特に驚きもせずに頷いている。ケイトは時折思うのだが、リリアは本当に同級生なのだろうか? 見た目は恐ろしく若く可愛らしいが、喋り方なども含めて若々しさを感じられない時がある。
「あー‼︎ 思い出したらまた気持ち悪くなってきた! ラッコちゃん責任とって今日は一緒にオレと寝ること!」
「えっ?! オレのせいなのか? でも無理矢理聞き出しちまったのはオレだし……スカラビアに来てくれるんだったらいいぜ!」
結構勝手なことを言われているのにカリムは快くフロイドの言うことを了承した。カリムは話すことを止めていたのに勝手に語ったのはフロイドの方だと言うのに、カリムの心の広さは無限大なのだろうか。常々ケイトは感心するしかない。
じゃあラッコちゃんの部屋行こ! とフロイドはカリムを横抱きに抱え上げ、立ち上がると軽音部の部室をカリムと共に後にした。残されたリリアとケイトはその二人をただ見送るしかない。
「いやぁ、意外なことが知れたのぅ」
「カリムくん、あれで良いのかな……?」
広げられたお菓子は全然減っておらず、カリムの持ってきたジャミル特性のお菓子なんかも残したまま。
こうなったら映画鑑賞のやり直しをしようとリリアとケイトは決め、映画を最初から見ることにしたのだった。畳む